3.火山活動と防災対策の経緯
(18)岩手山火山防災情報ステ−ションの開設

 岩手工事事務所は、松尾村に「岩手山火山防災情報ステ−ション(愛称:イ−ハト−ブ火山局)」を、2000年6月16日に開設した。施設は、非常時には現地対策本部の会場となり、平時は火山活動に関する基礎的な知識から岩手山の活動状況や防災対策についてジオラマやパネルをもちいてわかりやすく解説する啓蒙施設の役割を果たしている。入場者は、開局2年余の2002年8月10日に3万人を達成した。

 また、火山に関する図書を集めた図書室や研修室があり、開局以来、毎月火山防災の専門家による研修会が開催され、毎回50名以上の住民が参加している。

 岩手工事事務所は、岩手山周辺に光ケ−ブル網を敷設、山体や砂防ダムを監視するカメラや土石流検知センサ−をつないで、火山防災ネットワ−クを構築している。これらの情報は、同ネットワ−クを通じて、岩手山火山防災情報ステ−ション、岩手山周辺の5町村役場や盛岡市の市民交流施設の同子局、盛岡地方気象台、盛岡森林管理署などに配信している。また、監視カメラの映像は、岩手工事事務所のホ−ムペ−ジで一般に公表されている。NHKや地元民放各社も水蒸気爆発の可能性が指摘されて以降、西岩手山を監視するカメラを設置し、その映像をホ−ムペ−ジで公開したり、防災関係機関に提供していたが、活動が小康状態になるとともに撤退し、岩手工事事務所の映像がテレビ局にも配信する体制が整備された。この他、盛岡地方気象台、岩手県警察本部、岩手大学工学部等も独自に監視カメラを設置、テレビ局で録画された映像は岩手大学で詳細な噴気活動の分析に供されている。 なお、岩手工事事務所が進めている光ケ−ブル網の敷設は、山頂部をもカバ−する計画である。各機関の観測機器を光ケ−ブルに接続することにより、電源もない厳冬期の観測の困難さを克服し、機関ごとに収集解析される観測デ−タが共有化されることから、縦割りの弊害を自動的に排除する画期的な役割を果たすものと、早期の完成が期待されている。

 地元研究者を中心とする表面現象の観測には、岩手県の防災ヘリコプタ−「ひめかみ」や県警ヘリコプタ−「航空いわて」、自衛隊ヘリコプタ−などが協力、機上観測や現地調査のための人員や器材の輸送に貢献している。「岩手山の火山活動に関する検討会」座長として、機上観測は100回を越えている。また、国土交通省、自衛隊、岩手県警察本部など各機関のヘリコプタ−からの映像情報を共有化するヘリテレ画像情報ネットワ−クも構築された。


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