3.火山活動および防災対策の経緯
(5)「岩手山火山災害対策検討委員会」の立上げと「岩手山火山防災マップ」の作成
 

 岩手山については、建設省岩手工事事務所が砂防事業を対象とした災害予想区域図の策定を進めていた。しかし、この図は住民の防災対応を視点としたものではなく、また公表を予定したものでもなかった。防災の実務にあたる行政機関と被災する住民が共有し、さらに現実的な防災対応が可能な”被害想定”が急務であることが認識するための、国・県・市町村の防災担当者との忌憚のない意見交換が大学を中心に行なわれ、緊急対策の立案と試行に前進することを前提にして、火山防災マップの策定に関係者が力をあわせることが了解された。そして、急遽、98年7月8日に総合的な火山防災を進める第一歩としての火山防災マップを作成するため、 「岩手山火山災害対策検討委員会(委員長:斎藤徳美岩大教授)」(事務局:建設省岩手工事事務所、岩手県土木部砂防課、岩手県総務部消防防災課)が設置された。噴火の恐れが指摘されている中での想定であることから、委員会では、緊急性の高いものから迅速に作業を進めることとした。

 被害予測の基礎になったのは、同委員会の委員の一人である土井宣夫地熱エンジニアンリング(株)主席技師長の20余年にわたる岩手山噴火史の研究成果である。特に、縄文時代以降の噴火状況が推定されていなければ、マップの作成は不可能であったと思われる。なお、土井氏はその功績により、2002年度防災功労担当大臣表彰を受けた。


 


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