■ 2002年6月以降の岩手山の表面現象の所見 ■ 

 第21回岩手山の火山活動に関する検討会」(2002年6月21日)以降、ヘリコプターによる機上観測は以下のように行われた。
 
 2002年6月20日、自衛隊ヘリ、岩手駐屯地発着、機上観測、黒倉山山頂および大地獄谷とも噴気弱く、ランク3以下。大地獄谷主噴気孔の周辺の硫黄の飛散はわずか。大正火口の上部に円形の笹枯れ区域確認、旧噴火口かも。大松倉山、三ツ石山方面は笹枯れなどの変化なし。9時30分〜10時30分
 2002年8月22日、県防災ヘリ「ひめかみ」、機上観測、黒倉〜姥倉分岐着陸、黒倉山〜姥倉山北斜面F3から姥倉方向F4初踏査。稜線部からF3にかけ新噴気孔数ヶ所確認。姥倉山方向F4は部分的に枯れがあるが緑が多く残る、F4東端から約140m余の間に約32箇所噴気孔確認。(噴気は2000年時から柏台で確認)温度は最高85度。F3の噴気温度は、95〜96度と2000年9月7日と変化なし。
 黒倉山山頂・大地獄谷など噴気弱めであったが、13時以降急激に強まり、黒倉山山頂全域から吸う10m程以上吹き上げる。黒倉山西側裸地の西北小沢、三角岩でも噴気強まり、小原1号(92.1度)および姥倉山方向でも噴気連動して強まる。
 大地獄谷西小沢、3号噴気付近から表層すべりを生じ、土砂流下。
 ヘリ、宮古救急に出動、網張温泉へ自力下山。登山道は笹で覆われる。(斎藤・土井・小林・小原・遠藤・和田・他坂田電機)、9時10分岩手高原発、17時網張下山。
 2002年8月27日、自衛隊ヘリ、岩手駐屯地発着上観測、13時〜14時。黒倉山山頂、大地獄谷など噴気弱い、北斜面など噴気目視されず。薬師火口周辺は噴気など目視されず、変化はない。御苗代湖も変色などの異常なし。

 国土交通省岩手工事事務所の下倉山監視カメラのビデオ映像の解析は、岩手大学で継続して行われているが、7月〜8月に悪天候が続き、観測できない日が続いた。また、地元民報の関しカメラの映像に比し、岩手工事事務所のカメラは黒倉稜線部から大地獄谷にかけての広いエリアをカバーしているため、アップされていた従来の映像の解析より、多少低めのランクになっている可能性がある。
 大地獄谷、黒倉山山頂とも低いレベルで推移しているように見られるが、8月22日の現地調査で強い噴気に遭遇したように、断続的に強い状態が生じている可能性もある。

 「西側での表面現象」
 監視カメラのビデオ映像の解析による大地獄谷の噴気ランク(1日でのランク)は、民族の下倉監視カメラが撤去された5月17日以降も弱い傾向が継続している。主噴気孔周辺の硫黄の飛散も少ない状態にある。
 県が設置している地温計の温度は、黒倉・姥倉中間のCH2は9月2日は97.0度で従来の最高温度97.1度に近く、分岐のCH3も9月2日は96.4度で従来の最高温度96.6度に近い値を維持、姥倉のCH5は、2000年時の70度から今年7月には89度まで上昇(9月2日は97.4度)し、高い値を維持している。稜線部北斜面の噴気孔の温度も、8月22日の現地観測で95〜96度と2000年9月時と変わりはない。
 西岩手山全域での噴気の勢いは低下しつつあるように見えるが、周辺が十部に加熱されているため、噴気量が減少しても温度は高めで維持されているものと考えられる。

 「東側での表面現象」
 8月27日の機上観測では、従来目視できた南東火口壁の弱い噴気も確認できず、表面現象に変化はみられなかった。
   

文責:斎藤徳美  「第39回 INS岩手火山防災検討会資料」より


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