■ 2000年11月以降の岩手山西側での表面現象 ■ 

 第87回火山噴火予知連絡会(2000年11月2日)以降の岩手山西側(大地獄谷〜黒倉山〜姥倉山)では噴気量、地温などの表面現象は大きく変化はなく、活発な状況が継続している。ヘリコプターによる機上観測は、岩手県防災ヘリコプター「ひめかみ」および県警ヘリが10月から12月にかけて定期点検により飛行が不能であったため、2000年12月17日および2001年1月9日の2回に限られた。雫石町の岩手山火山特別調査隊は、2000年11月16日に網張温泉から登山し姥倉山〜黒倉山周辺の現地調査を実施した。
 報道機関が設置した監視カメラのビデオ映像による噴気状況の観測は継続し行われている。岩手大学で提供を受けているのは、テレビ岩手が松尾村下倉スキー場に設置しているもの、岩手めんこいテレビが同所および雫石町小
高倉山に設置しているものである。
 12月17日の機上観測では、前日の大量の降雪により、地面の露出している区域は、噴火の著しい黒倉山山頂崖面、大地獄谷主噴気孔周辺、西小沢1・2号噴気、黒姥北1号噴気、三角岩周辺などに限られ、黒倉山西斜面裸地も雪に覆われている状況にあった。2001年1月9日には前日も降雪があったと推測されるが、以下のような現象が観測された。

■ 黒倉山西斜面の円形裸地は、昨年度の冬場は円形裸地全体は融雪せず、融雪部は上部が主であったが、範囲が裸地の南端に拡大し、露出の程度は南側で顕著である。同裸地では昨年春以降地温の上昇が観測され、斉藤らによる2000年9月28日の現地観測で、南端部からの新たな噴気が立ち上り始めたことを確認(地温95度)しているが、現在も地温上昇部が拡大傾向にあることを示していると推測される。

■ 姥倉山分岐点から姥倉山方面に融雪部が拡大し、土井により東西性の断層と推定されるF5、F7、F8?に沿って十箇所以上の円形噴気孔が点在しており、現在もその傾向にあることを示していると推測される。

■ 大地獄谷主噴気孔周辺では硫黄の付着が顕著で、大地獄谷の火口稜線付近まで(大正火口には至っていない)積雪のうえに広範囲にうっすらと黄色味をおびた範囲が分布している。降雪後何一つも長時間たっていない可能性が強いことから、主噴気孔の活動も活発な状況が継続しているものと推測される。
 なお、黒倉山西斜面裸地、黒倉山〜姥倉山稜線部の三角岩を中心とする鞍部一帯は、ほとんど雪が溶けている状況にあるが、昨冬と顕著な差異はないようである。
 松尾村柏台観測点からの土井臨時委員夫人目視観測、テレビ岩手の監視カメラのビデオ解析による黒倉山山頂、大地獄谷の噴気は変動はあるものの、強い状況が継続している。特に、11月16日には、機上観測でこれまで最も強い状況が確認された2000年1月19日に匹敵する噴気が観測された。松尾村柏台観測点からの噴気観測結果については、土井臨時委員の報告を参照されたい。
 前回の予知連に資料提出が間に合わなかったが、2000年10月10日および10月28日の雫石町岩手山火山特別調査隊の現地調査の際には、黒倉山西斜面裸地西北端から西北小沢で一帯で十数メートル以上に噴気が立ち上り、また、黒倉山〜姥倉山稜線部の多数の地点から一斉に噴気が立ち上るのが観測されている。なお、薬師岳火口周辺は、妙高岳南斜面、奥宮、南東側火口壁の一部に融雪部が1月9日の機上観測で確認されているのが、昨年から特に変化は認められていない。
 

文責:斎藤徳美  「第88回 火山噴火予知連絡会資料」より