■ 2000年2月以降の岩手山西側での表面現象 ■ 

 第83回火山噴火予知連絡会(2000年2月4日)以降の岩手山西側(大地獄谷〜黒倉山〜姥倉山)では噴気量の増加、新噴気孔の出現、笹枯れ区域nの拡大といった表面現象が継続して観測されている。岩手県防災ヘリコプター「ひめかみ」による機上観測は、2月15日・2月19日・2月29日・4月3日・4月15日・4月26日・5月9日の7回実施され、山体全域の表面現象を観測した。大地獄谷の噴気量の変化は、下倉スキー場に設置されているテレビ岩手の監視カメラのビデオ映像から解析した。網張元湯の噴気量の変化は、小高倉山に設置されている岩手めんこいテレビの監視カメラのビデオ映像から解析した。黒倉山および黒倉山〜姥倉山北斜面の表面現象の詳細な観測は、松尾村柏台の土井宣夫氏宅で昨年5月から行われているが、その結果については土井氏の報告を参照されたい。

■ 大地獄谷の噴気量の変化
 大地獄谷の噴気量は、1999年秋以降、しばしば大地獄谷稜線を越え、ランク5以上に達するのが観測されているが、ビデオ記録による連続解析は2000年1月19から行われている。1月〜3日には観測可能日のほとんどがランク5以上であったのに対し、4月には半数以上がランク4以下となり、活動が低下に転じたかのように見えた。しかし、5月には再び大半がランク5以上となり活動は周期的に変化している。
 なお、大地獄谷の通称「大穴」と呼ばれる噴気孔周辺に小規模ながら泥の噴出しているのが、4月15日に確認された。

■ 網張元湯の噴気量の変化
 網張元湯では、1999年10月12日に犬倉山稜線近く、2000年2月20日に同稜線を越えて噴気が立ち上がるのが確認されているが、継続的な観測は2000年4月以降で、まだ明瞭な傾向は把握されていない。

■ 大地獄谷西小沢周辺での新噴気孔群の出現
 1999年春の融雪と共に、西小沢一帯で顕著な笹枯れが出現し、その後、同年8月17日に沢の下流部西斜面に弱い噴気(西小沢1号噴気)およびその上流部に熱水の湧出が確認された。西小沢周辺では、1999年11月の冠雪時から2000年2月までの機上観測で、4箇所で部分的に融雪が観測されているが、2000年4月15日に約20箇所に融雪部が増加しているのが観測された。沢の最上部の融雪は径が10数メートル以上あり、まだ緑色の笹の部分からも弱い噴気が立ち上っており、ごく最近に熱的な活動が活発化したものと考えられる。

■ 黒倉山西斜面裸地の地温上昇
 雫石町「岩手山火山活動特別調査隊」の現地調査によると、
 黒倉山西斜面の裸地の中腹の地温は、3月28日 94.3度
 同裸地のさらに西側の裸地の地温、3月4日 81.5度、3月28日 94.3度、と地温の上昇傾向がみられた。

文責:斎藤徳美  「第84回 火山噴火予知連絡会資料」より