行政機関には、火山防災を専門に対応する部課も専門的知識を有する職員も不在であった。県では、総務部消防防災課が対応にあたり、市町村では総務部の消防防災、あるいは消防交通に係わるごく少数の職員が対処していた。岩手県では、火山防災マップに基づく防災対応に本腰を入れるため、98年9月10日に消防防災課に課長級ポストとして火山対策監(小野寺博氏)を設置、さらに、火山対策監補佐、火山対策主査、火山対策主事の合わせて4名が岩手山防災に専念する体制が取られることとなった。この体制強化は、岩手県が火山防災の先進的地域つくりを目指す上で大きな力となった。
一方、岩手山が常時観測火山ではないこともあって、公的に火山の状況を公表する立場にある盛岡地方気象台にも火山の専門家は配置されていなかった。98年6月24日の臨時火山情報2号の内容についても、盛岡地方気象台では文面どおり”噴火の可能性”を強調したのに対し、仙台管区気象台や気象庁火山課では”火山活動が活発化すれば噴火の可能性があるのは一般的な事象”と認識に差があり、連携体制の充実が望まれた。要望により、火山専門官が盛岡地方気象台に配置され、体制の強化が図られた。