■ 共生への体制づくりを今こそ ■

岩手山はここに存り続ける)
火山性地震が頻発し始めてから満4年がたちました。活動は小康状態にありますが、1月5日および6日に東側で火山性微動が観測され、一方、西側の噴気も活発で、沈静化とは言い難い状況がなお続いています。監視や防災体制を整備し、昨年から東側4登山ル−トの規制を緩和、生きている火山との共生への試みがスタ−トしました。その一方で、もう安全で、防災への取り組みは過去のものといった受け取り方も一部には芽生えつつあるような危惧も感じます。時間は要しても、このままじわじわと活動が低下し、噴火なしに今回の動きが終息に向かう可能性は大きいと、期待しています。しかし、沈静化とともに、せっかくゼロから築き上げられた防災体制が霧散してしまうとしたら、これまでの県民の血のにじむような努力は無に帰すことになります。岩手山は、これからも私たちのそばに存り続け、私たちはその恵みを受け生き続けるのです。

(息長い防災活動の体制を)
急転直下、万一噴火が始まったりしたら、先ず緊急対応が急務となります。しかし、小康状態にある今は、ガイドラインに理念として掲げた連帯責任と連携の体制つくり推し進める貴重な機会ともいえます。火山防災の先進地北海道でも、必ずしも有効に機能しているとは言い難いのですが、県を中心に関係市町村による「岩手山火山防災協議会」といった組織が必要と小生は考えています。沈静化後には異常時のように頻繁な対応は不要ですが、登山シ−ズン前の現地調査、他機関とも連携した火山観測や災害対策の検討、防災意識の風化防止のための防災訓練やシンポジウムの定期的な開催、噴火史の研究などが必要です。また、特に活動周期の長い火山では、観測デ−タや防災対応の経緯を後世の資料として整理し引き継ぐことも重要です。これらを遂行するための組織や人材育成とネットワ−ク作りの体制をどうしたら確立できるのかの模索が今求められています。岩手の特徴でもあるINSの活動のみでは限度もあるのです。3月には経験豊かな防災関係者は大幅に異動になります。上記課題を克服するための組織作りが今後の大きな課題です。

6市町村広報 2002年3月掲載予定より

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