■ 岩手山の火山観測機器 ■
火山災害を減らすには、1.火山活動の監視 2.災害予測地域の想定 3.緊急対策の立案と試行、が重要とされ、火山観測は防災に不可欠です。
八十六の活火山のうち、阿蘇山など活動の活発な十九の常時観測火山については、定期的に観測が行なわれています。しかし、岩手山は常時観測火山には含まれておらず、活発化以前には東北大学の四箇所の定常観測点以外はほとんど観測機器がありませんでした。 現在設置されている機器は様々です。マグマ、蒸気、熱水などの活動による火山性地震は地震計で観測します。マグマが上昇すると、山体が膨らんだり傾いたりするため、傾斜計や岩盤の歪みを計る歪み計が変化を捕らえるのに役立ちます。近年は人工衛星の電波を利用した位置測量装置(GPS)により、微小な山体の変化が観測されます。マグマの移動による磁場の変化を捕らえる磁力計、地温の変化を捕らえる地温計、爆発による空気振動を捕らえる空振計、噴気などを直接観測するための監視カメラも設置されています。
(機器の維持、補修に努力)
気象庁では、地震計七箇所、空振計三箇所など独自の観測点の他、東北大学や岩手県が設置した地震計の記録も転送され、二十四時間体制で監視を行なっています。東北大学の「地震・噴火予知研究観測センタ−」では、十年以上前から、岩手山周辺五箇所の地下に地震計、傾斜計、歪み計を埋設している他、二十七箇所に地震計などを臨時に設置しています。国土地理院、地質調査所などの研究機関や国土交通省岩手工事事務所も機器を設置しています。岩手県も独自に姥倉山〜黒倉山に二台の地震計と五台の地温計を設置し監視をしています。岩手大学には定常観測点はありませんが、微動の震源観測や噴気、地温など現地調査に尽力しています。
日本でも有数の観測体制ともいわれていますが、東西十数キロメ−トルにもおよぶ巨大な岩手山では、とても十分とはいえません。積雪期が長く、電源もない山奥の機器の維持や補修も大変です。 噴火の周期が長く経験則による予測が困難な岩手山で、事前に出来るだけ兆候をつかみ、噴火の予測に生かそうとする関係者の努力が毎日続けられているのです。
6市町村広報 2001年4月掲載より