■ 「三宅島」にみる予測の困難さ ■
(安全宣言から島外避難へ)
北海道の有珠山と同様、噴火の前に「緊急火山情報」が出され、事前避難により災害から身を守ることに成功したかにみえた三宅島が、困難な事態に直面しています。(十月七日に書いています) 緊急火山情報が出され、島内避難が行われた直後の六月二十九日、火山噴火予知連絡会(予知連)は、”マグマの動きが手に取るようにわかった”と事実上の安全宣言をだしました。有珠山で初めて噴火前に緊急火山情報が出され、三宅島でも成功と、気象庁の二連勝との称賛の声すらでた程です。 三宅島は一九八三年、一九六二年、一九四十年というようにほぼ二十年周期で噴火を繰り返しており、経験則から噴火が起きることは予測されていました。しかし、噴火の形態は予測外のものでした。山頂の大陥没、山頂での大噴火、低温の火砕サ−ジの流下、火山性ガスの噴出などが起きました。八月三十一日、予知連は”今後の予測が困難になった”として住民の安全確保に最大限の警告を発し、遅れ馳せながらの島外避難が行われることになりました。さらに、より高温の爆発的噴火の可能性も指摘されるなど、今後の見通しも不明瞭です。
(岩手山ではどうすべきか)
岩手山では、多くの観測機器を設置し、いつ、何が起きるかを予測しようと関連機関は努力をしています。しかし、二百七十年余り噴火がなく経験則のない岩手山です。もしかして、学識者の見解が別れ、予知連の見解が迅速にまとまらないこともあるかも知れません。その際、助言者としての「県の検討会」はどのように対応すべきか、正直、悩みはつきません。 少しでも危険があるとしたら、住民の皆さんは、生活への支障をいとわず避難しよう!という気持ちを持ってくれるのでしょうか。行政は、空振りや批判を恐れず、安全第一で判断を下せるのでしょうか。問い掛けて欲しいのです。 得られた確かな情報はすべて開示し、「ここまではわかる、このさきはわからない」と正直に伝えたいと私は思っています。そのこと前提に、「人の命を最優先に対応する」との認識を、住民の皆さん、行政機関が共有することの必要性を三宅島の噴火は改めて訴えていると思います。
6市町村広報 2000年11月掲載より